「iPhoneは音が悪い」って本当!?iPhoneこそがハイエンドオーディオである。その理由

Takashi Fujisakiのアバター
15050文字

「iPhoneは音悪いよ」「AirPods音いいとか草」「音楽聴くならAndroidかDAPっしょ」

ネットで音楽好きの話を見てると、iPhoneの音が悪い理由として「AACコーデックしか使えないから」「aptXもLDACも使えない」「イヤフォンジャックないとかw」といった声が聞こえてきます。でも、これって本当に正しいんでしょうか?

たしかにiPhoneは、Androidに比べてコーデックの選択肢が少ないのは事実。でも、それにはちゃんと理由があります。AppleにはAppleなりの“音作り”の考え方があるんです。そして何より、AAC=音が悪いっていうのはちょっと違う。

音楽畑出身、そして長年のAppleファンとして、iPhone × AACの素晴らしさにようやく気づいた今、ぜひ一人でも多くのiPhoneユーザーにこのことを伝えたいと思いペンを執り…もといキーボードを叩いています。

この記事では、「iPhoneでいい音を楽しむにはどうすればいいか?」というテーマで、なるべく難しい話は抜きにして、でもちゃんと科学的にも納得できる内容でお届けします。

「でも、お高い機材が必要なんでしょ?」と思ってる人も安心してください。できるだけお金をかけずに、今ある環境を活かして音を良くする方法もバッチリ紹介します。

この記事で扱う内容はこんな感じです。

  • AACって本当にダメなの?って話
  • AppleがaptXなどのコーデックを採用しないワケ
  • ロスレス音源とロスレス接続の違い、ややこしい話をやさしく整理
  • iPhoneユーザーがいい音で音楽を聴くためのコスパのいい方法とアイテム
  • 「ハイレゾ最強」みたいな神話にちょっと待ったをかける科学的な視点

iPhoneでも、ちゃんと「いい音」は手に入ります。この記事が、そのヒントになればうれしいです。

AAC接続は音が悪い?iPhoneのAACの真実

AACは音が悪いってホント!?

iPhoneをはじめとするApple製品は、AAC (Advaced Audio Coding) と呼ばれる仕組みで音をワイヤレス伝送します。Apple製品だけでなく、参加ブランドのBeatsのオーディオ製品も一貫してAAC接続です。(音がいいと言われる)aptX系やLDACには対応していません。

ここで音楽好きの間でよく出てくる話題が「AACて音悪いよね 」からの「iPhoneって音悪いよね」ってやつ。でもこれ、本当にそうなんでしょうか?これから、その噂について徹底的に紐解いていきます。

AACってなに?

Bluetoothで音を送るときは、音声を圧縮して伝送します。無圧縮ではデータ容量が大きすぎるからです。2025年6月現在は、まだ無圧縮でワイヤレス転送する仕組みは普及していないので、今のところはBluetooth(ワイヤレス)接続 = 圧縮して音声を送る という認識でいいと思います。

その圧縮方式のひとつがAACです。AACは、MP3の後継として登場した音声圧縮フォーマット。Appleだけじゃなく、YouTubeやSpotifyでも広く使われているメジャーな形式です。

同時に、Bluetoothで音を送るときの「コーデック」としてもAACは使われています。つまり、「圧縮ファイル形式としてのAAC」「BluetoothコーデックとしてのAAC」という2つの意味でAACが登場するわけです。ちなみにコーデックとは音を圧縮したり展開したりする仕組みのことです。

もう一度おさらいすると、iPhone, iPad, MacとAirPods, BeatsヘッドフォンなどApple製品および関連ブランド製品ではこのAACがBluetooth接続の標準コーデックになっていて、AirPodsとかBeatsとかApple系のワイヤレス製品は全部これで通信してます。また、Apple Musicの高効率音源もAAC圧縮されたものです。

ここがポイント

check音声フォーマットとしてのAACとBluetoothコーデックとしてのAACがある

checkApple製品は一貫してAAC。上位コーデックと言われるaptX系やLDACには非対応

他のコーデックと何が違うの?

さて、BluetoothコーデックにはAAC以外にも「SBC」「aptX」「LDAC」などさまざまあります。以下に現在主流のコーデックについて簡単にまとめてみました。

※サンプリングレートやビットレートは理論上の最大値です。実際の端末への実装値とは異なります。またこの数値については本記事の本題ではないので、細かいことは省いてあります。

コーデックビットレートビット深度サンプルレート
aptX Lossless1,200 kbps24-bit96 kHz
LDAC990 kbps24-bit96 kHz
LHDC900 kbps24-bit96 kHz
aptX HD576 kbps24-bit48 kHz
aptX Adaptive279 – 420 kbps24-bit96 kHz
aptX352 kbps16-bit48 kHz
LC3 (LE Audio)345 kbps32-bit48 kHz
AAC 約 256 kbps16-bit44.1 kHz
SBC192 – 320 kbps16-bit48 kHz

AndroidではaptX系やLDACといった高音質を謳うコーデックが使える機種もあります。たしかにこれらはビットレートも高くてAACより「音がいい」ように思えます。上の表を見ても、AACは数値的には一番下って感じですね。

でも、その数字がそのまま、本当に「音の良さ」の差なのでしょうか?

一般的に、というか周知の事実として、ビットレートの数値が高いSBCよりAACの方が高音質です。これが何を意味するのか。それは、「圧縮の効率が違う」ということなんです。

Amazonの箱に例えてみましょう。たまに、ほんの小さな小物を注文したのに、やけにデカい箱に入ってきたって経験はありませんか?純粋な配送コストのことだけで言えば、もっと小さい箱で送るか、いろんな商品を箱いっぱいに詰めて送るかしたほうが効率がいいわけです 。

AACは、商品が箱いっぱいに詰まっているような状態なので、同じ1箱でもたくさん商品(音の情報)を転送できる、つまり数字上は小さくても多くの音情報を伝送できる = 音質面で有利、というわけです。

iPhoneのAACはLDACやaptX HDに比敵する!?

さらに驚くべき事実をご紹介しましょう。iPhone / iPadなどのApple製デバイスのAAC実装は、LDACの高ビットレート( 660kHz/990kHz)やaptX HDと肩を並べる品質があるというもの。

Archimago氏による計測では、iPhone 11(2019)やiPhone 14 Pro(2022)のBluetooth AAC(256 kbps)のTHD+Nは −70 dB以下、TD+Nは −65 dB以下と、Android上でのLDAC 909 kbpsと同等以上の数値を記録し、高域の解像度(FFTパターン)もLDACを上回る部分があったと報告されています。つまり、iPhoneのAACは「単なる低ビットレートのコーデック」ではなく、専用ハードウェア+OS連携で超最適化された高品質なエンコードを実現しているというわけです。

下の画像から、iPhone(青)の広域の解像度が圧倒的であることが見てとれます。

引用: Archimago’s Musings: Part II: Comparison of Bluetooth Fidelity – AAC encoder quality (Android 10 & 13, Windows 11, Apple iPhones & Mac)

  Redditでも「iPhoneのAAC 256 kbpsはaptX HDより良く、LDAC > 900 kbpsと同等以上に聴こえる」「Appleは単一コーデックに注力してしっかり最適化している」と多数のコメントが上がっています。  

ただし、これはiOS / iPadOSのみの最適化のようでmacOSやWindowなどでは若干品質が劣ります。繰り返しますが、iPhone / iPadだけが高品質AACを実現している、というのがミソです。 

ここがポイント

checkiPhone / iPadのAACは専用ハードウェア+OS連携で超最適化されている!

補足 AACはイヤフォン・ヘッドフォン側もAppleじゃないと音が悪い?

iPhoneやiPadは高品質AACを実現しているというのは上記のとおりですが、ここでひとつ、こんな疑問を感じた人はいませんか?

「高品質AACで聴くには、イヤフォン(ヘッドフォン)側もAppleじゃないとダメなの?」

結論。受信側はSonyやBoseなどの別メーカーでもOK!大事なのは受信側(イヤフォン、ヘッドフォン)もAACをサポートしていることのみ。それだけでiPhoneは常に高品質で安定したストリームを送出します。

iPhoneのAACは高音質!その理由

というわけで、いかにiPhoneのAACコーデックが優秀かについての裏付けとして、3つの記事をご紹介します。

まずこちらの記事では、iPhone 11(2019)およびiPhone 14 Pro(2022)のBluetooth AAC再生では、256kbpsながら高域成分を鮮明に再現し、FFTパターン上でLDAC 909kbpsに引けを取らない性能を示しています。さらにTHD+Nは-70dB以下、TD+N(時間歪+ノイズ)も-65dB以下を達成。ビットレートを抑えながらも歪みを抑制し、信号の忠実度が高いことを証明しています。

iPhone 7のBluetooth AACのフラットな周波数特性、やほぼ16ビット分解能に相当するノイズ性能を示しています。また、同条件でのAndroid機と比較し、iPhoneのAAC実装が圧倒的に優れているという結果が示されています。

AppleのAACエンコードにおけるビットレートと音質の最適化の方法が詳しく書かれています。

2025年6月現在のBluetoothコーデックランキング(主観!)

これをふまえて、先ほどの表にAAC (iPhone) を加えてみました。また、完全僕の主観ですが、25点満点のスコアをつけてみました。

コーデックビットレートビット深度サンプルレートスコア
(25点満点)
aptX Lossless1,200 kbps24-bit96 kHz25
LDAC990 kbps24-bit96 kHz24
LHDC900 kbps24-bit96 kHz23
AAC
(iPhone)
約 256 kbps16-bit44.1 kHz23
aptX HD576 kbps24-bit48 kHz21
aptX Adaptive279 – 420 kbps24-bit96 kHz19
aptX352 kbps16-bit48 kHz18
LC3 (LE Audio)345 kbps32-bit48 kHz17
AAC (汎用)約 256 kbps16-bit44.1 kHz16
SBC192 – 320 kbps16-bit48 kHz12

点数の根拠ですが、まずは現存する最高のコーデック aptX Losslessを25点として、それを基準に、「5点差でまぁ違いがわかる、3点差はわかる人はわかるかもしれない」くらいな感じで点数をつけてみました。我ながらまぁまぁ的を射ているんじゃないかと思っています。

iPhoneのAACは点数こそ3番目ですが、なんといってもこのビットレートの低さですから、圧倒的に効率的だと言わざるを得ません。(ちなみに330kHzのLDACはSBC以下とも評されることも…)

「iPhoneはAACだから音が悪い!」と豪語している人はきっと、上記表の「AAC(汎用)」の数値だけを見て言っているのかもしれません。もしくはAndroidやWindowsのAAC接続しか体験していないかもしれません。

長年iPhoneやBluetoothイヤフォン・ヘッドフォンに親しみ、それなりに音にはこだわってきたつもりの僕が、世界のさまざまな検証結果と自分の耳で体感してきた経験を踏まえた結果が、上記の表となります。(あくまで主観的なものではありますが…)

「iPhoneは音が悪い」を払拭する!iPhoneでいい音で音楽を聴くための基礎知識

いろんなオーディオ系YouTubeをご覧になっている皆様。ここまで読んでいただいたあなたは「iPhone(のAAC)は音が悪い!」というのがまやかしだということがお分かりいただけたかと思います。

次に。「いい音で音楽を聴くためにはさまざまな要素がある」というのもご存知かもしれません。たとえば以下のようなもの。

  • 音楽プレーヤー
  • Bluetoothコーデック
  • DAC・アンプ
  • ケーブル(リケーブル)
  • バランス接続
  • エイジング
  • ハイレゾ
  • ロスレス
  • イヤフォン・ヘッドフォン(スピーカー)
  • ノイズキャンセリング

こんなに種類があったら、たくさん勉強しなきゃだし、金もかかるし…どうすりゃいいんだよ…って思っちゃいますよね。でも安心してください。この中で必要なものはごく一部です。その他は無視してOK。この後の記事を読むだけで、あなたはiPhoneで最高にいい音を聴くことができる知識と、実環境を手に入れることができます。そう、今日からでも。

デカい音で聴こう

まず最初に、基本中の基本から。音は、デカければデカいほど音がよくなります。理想は80〜85dB程度、これは、うるさいのちょっと手前くらいの音量。AirPods を使っていればiPhoneで簡単に計測できたりもしますので、持っている方はお試しください。

もちろん、爆音で音楽を聴き続ければ当然耳にダメージが来るので、その辺は自分でバランスよくやる必要があります。僕はもともと音楽業をやっていたのもあり耳が爆音に慣れてしまっていて、90dBくらいはないと「いい音で」音楽を楽しめなくなってしまいましたが、よい子はあまり真似しない方がいいと思います。

Apple Musicの音源の種類を知ろう

まず予備知識として、Apple Musicの音源の種類について簡単に説明します。

Apple Musicは「高効率」「高音質」「ロスレス」「ハイレゾロスレス」の3種類の音源を選ぶことができます。それぞれ以下のような違いがあります。

高効率HE-AAC形式の圧縮音源。
低いビットレートで実用的な音楽再生を実現する技術。
高音質256kbps AAC。圧縮音源だがロスレスに匹敵するほどの高音質。
ロスレス元々の音声データとまったく同じ状態に復元できる可逆圧縮形式。
Apple MusicではALAC(Apple Lossless Audio Codec)形式が採用されています。
ハイレゾロスレスロスレスかつハイレゾ(24bit/96kHz以上)の音声データ。
(この記事では深く言及しません。)

さて、いい音で音楽を聴くためにはこの中のどれを選ぶべきでしょうか。まず、Bluetooth接続の場合は「高音質」、つまり256kbps AACで充分です。ロスレス以上にしても、無駄に転送容量が爆上がりするだけで音質は向上しません。

有線接続の場合は必ず「ロスレス」(またはハイレゾロスレス)に設定しましょう。ちなみにですが、ハイレゾは、少なくともイヤフォン・ヘッドフォンで聴く場合には、ほぼ違いはありません。なぜなら人間の聴覚の限界を超えた世界での戦いだからです。この辺は本筋ではないので割愛します。

また、ロスレス音源はデータ量がとてつもなくデカいので、Wi-Fi環境下でストリーミングするか、またはダウンロードしておくようにしておきましょう。5G環境下でやると秒でパケ死(←)しかねませんのでご注意ください。

ワイヤレスイヤフォンオンリーの方はすべて「高音質」で充分、有線イヤフォンも使うこんな↓感じに設定しておきましょう。

ここがポイント

check有線イヤフォン・ヘッドフォンを使うなら「ロスレス」に設定しよう

空間オーディオ(ドルビーアトモス)とは

さて、上記の4つは音源の「品質」の違いでしたが、Apple Musicにはもうひとつ重要な要素があります。それが、「空間オーディオ」。空間オーディオの要素のひとつとして「ドルビーアトモス(Dolby Atmos)」というフォーマットがあります。これは、音楽をより立体的、空間的に表現するための仕組みのことです。

空間オーディオ、ドルビーアトモスについては今回は割愛します。詳しく知りたい方は過去記事をご覧ください。

iPhoneでいい音で音楽を聴くために「無視できるもの」

さて、まずは上記のいろんな音質に関する要素から、無視しても影響のないものについて挙げていきます。

iPhoneでいい音で音楽を聴くために無視してもOKな要素

  • 音楽プレーヤーの種類(今回はiPhone限定のため)
  • ケーブル(リケーブル)
  • バランス接続
  • エイジング
  • ハイレゾ

まずはこの辺。オーディオ初心者であれば、一切無視でOK。今回は本題ではないので詳しく説明はしませんが、ここにこだわったところで、通常の人間の耳に聴こえる音としての違いは現れません。唯一バランス接続は音量が変わりますが、音質とは無関係なため、これらについては、少なくともこの記事では言及しません

ただし、音楽プレーヤーやケーブルについては、2025年現在、普通に作られた、普通の品質のものに限ります。超激安や超低品質のもの、不良品などであれば音質は変わります。

iPhoneでいい音で音楽を聴くために「必要なもの」

というわけで、お次は必要なものを見ていきましょう。

iPhoneでいい音で音楽を聴くために無視できない要素

  • Bluetoothコーデック
  • イヤフォン・ヘッドフォン
  • ノイズキャンセリング
  • DAC・アンプ
  • ロスレス
  • イヤフォン・ヘッドフォン(スピーカー)

順番に見ていきます。まずはBluetoothイヤフォン・ヘッドフォンで聴く場合。これはここまでで説明してきたとおりです。AAC対応のイヤフォン・ヘッドフォンを選択する。条件はそれだけ。iPhoneでいい音で音楽を聴く方法って、実は最高にシンプルなんですよ。

欲を言えば、できればノイズキャンセリングが優秀なものを選びましょう。Bluetoothイヤフォン・ヘッドフォンで音楽を聴くのは、やはり屋外が多いと思います。その屋外においていい音で聴くためには、簡単に言えばできるだけ雑音のない環境で聴く、ということです。ちょっと専門的な言い方をするなら、いかにS/N比を稼ぐか、ということですが、そのためには、優秀なノイズキャンセリングが必要なのです。

「ノイキャンとか音悪くなるっしょ」と言う人もいるかもしれません。しかし、ノイズまみれの屋外で聴く想定では、優秀なノイキャンの方が圧倒的に高音質で聴くことができることは、疑う余地すらもありません。

お次は有線接続の場合。今度はBluetoothの場合とは事情が変わってきます。簡単にいうと、有線接続では「ロスレス」で聴くことができるので、Bluetoothよりもよりいい音で聴けます。

有線接続には2種類ある!

ひと口に有線接続といっても、実際は「アナログ接続」「デジタル接続(USBオーディオ)」の2種類があります。これは、イヤホン・ヘッドフォン側の仕様に合わせて変わります。

超かいつまんで言うと、有線イヤフォンのケーブルの端子が3.5mm(または6.3mm)ステレオミニジャックならアナログ接続に、USB端子ならデジタル接続(USBオーディオ)になります。

たとえばApple AirPods MaxのUSB-C版は、USB-C to USB-CケーブルによるUSBオーディオ(ロスレス)に対応していますが、Sony MDR-M1STは3.5mmステレオミニによるアナログ接続となります。

今のiPhoneには3.5mmジャックがないので、アナログ接続をする場合は、3.5mmからUSB-CかLightningに変換するヘッドフォンジャックアダプタやサードパーティのドングルDACが必要です。

まずはDAC・アンプ。と言っても、いわゆる仰々しい専門的なDACやアンプは一切不要です。ちなみにDACとはデジタル音源をアナログに変換する機構のことで、これを搭載したアダプタなどもDACと呼ぶことがあります。

というわけで僕のおすすめはこれ。1,500円以下とはいえ充分に人間の聴覚限界を超える高品質で、一般的なリスニング用イヤフォン・ヘッドフォンならこれ以上のDACは必要ありません。

インピーダンスの高い有線ヘッドフォンを繋ぐ場合は、もう少し出力の高いものを使いましょう。

iPhoneでコスパよくいい音で音楽を聴く!具体的な方法

さて、ここからは「iPhoneでいい音で音楽聴きたい!」を実現するための具体的方法とおすすめ機材についてご紹介していきます。

音源は音楽Apple Music一択

CDクオリティの音楽がストリーミングで聴けるようになった今、音源はストリーミング一択。そして、ロスレスに対応しているサービスで、かつiPhoneで聴くなら、もはやApple Music一択です。

Apple MusicはiOSとOSレベルで統合されているのと、Apple Oneというストレージなどとセットになったサブスクがよりコスパよく使えます。

もちろんTidalなどにこだわりのある人はそれらを選んでいただいて問題ありません。ただ、Spotifyは2025年6月現在、ロスレスに対応していないのでご注意ください。

Apple Musicをワイヤレスで聴くなら「高効率」(AAC)設定で充分!

前述のとおりですが、iPhone × ワイヤレスヘッドフォンのようにBluetooth接続で音楽を聴く場合は、AACというBluetoothコーデックによって圧縮されます。なので、Musicアプリ側の設定がロスレスでもAACでも、結局は同じようなもので、実質上音質は変わりません。というわけで、「高音質」の設定にしておきましょう。

AAC対応&優秀なノイズキャンセリング搭載のヘッドフォンを選ぼう

iPhone x AirPods Pro 第2世代。「音が悪い」という声も聞かれますが、本当にそうでしょうか。そもそもiPhoneでワイヤレスで音楽を聴く場合、基本的には屋外で聴くことが多いでしょう。そうなってくると、重要なのはS/N比。つまり、いかにノイズの小さい状態で聴けるかが、ほぼほぼ音のよさに直結すると考えていいわけですね。あくまで「いい音で音楽を聴く」という目的に特化しての話ですが。

Apple、Bose、そしてSonyなどメジャーメーカーのフラッグシップモデルのノイズキャンセリング性能は超一級品。おまけに、これら有名メーカーのフラッグシップモデルで「音質が悪い」ものは2025年現在、1台たりとも存在しません。あるのは「好みかどうか」だけ。(その好みもイコライザーである程度対応できます。)

Apple Musicを有線で聴くならロスレス音源で

有線接続は、Bluetooth接続とは違い、圧縮せずそのままの品質で音楽を伝送できるので、Bluetoothワイヤレスよりも高音質で音楽を聴くことができます。また、最高音質で聴くにはApple Musicの設定を「ロスレス」にしておきましょう。

つまり、劣化のない音源(ロスレス音源)を、圧縮しない方式(有線接続)で伝送することで、最高音質で音楽を楽しむことができる、というわけです。

アナログ接続・デジタル接続

iPhoneを有線接続で聴くには、主に「アナログ接続」「デジタル接続」の2つがあることを覚えておきましょう。理屈上は、デジタル接続の方がノイズを完全排除して伝送できる分高音質となりますが、とはいえ日常的なリスニングでは体感できる違いはまずないと言っていいでしょう。

ヘッドフォンの端子が3.5mmステレオミニジャックの場合は、上で説明したUSBドングルDACが必要になります。

また、最近のハイエンドのワイヤレスヘッドフォンにはUSB-Cケーブルによるデジタル接続に対応したモデルがあります。ヘッドフォン選びの際にはこの辺もチェックしておくとよいでしょう。

iPhoneでいい音で音楽を聴くためのおすすめワイヤレスイヤフォン・ヘッドフォン

さて、ここからは僕の個人的におすすめするイヤフォン、ヘッドフォンのご紹介です。特にワイヤレスの製品についてはちょっとお高いと感じるかもしれませんが、音の出口は音質を左右する超重要アイテムなので、ここで妥協するのはもったいない!ぜひともこだわっていきましょう。

Apple AirPods Pro 2

ベタだけど、結局これがシンプルにいい。何百というイヤフォン・ヘッドフォンを試してきて、改めて実感しています。iPhone × イヤフォン派なら迷いなく購入していいやつ。強力なノイズキャンセリング+クセのないサウンド。空間オーディオ・ドルビーアトモスにも対応。Appleのエコシステムの恩恵を100%享受できる。弱点は、あまりにも人と被りまくることくらい。

AirPods Pro2 は音が悪いという人がいますが、時価総額世界トップクラス企業Appleの超天才エンジニアたちが開発するフラッグシップモデルのイヤフォンだということを忘れてはいけません。ただ、フラットな特性なので、より楽しいサウンドを求める場合は好みが分かれると思います。

Technics EAH-AZ100

AirPodsはいやだ!という方にはこちらがオススメ。磁性流体ドライバーを搭載し、低域のタイトさと中高域のクリアさを両立。長時間リスニングでも音の鮮度が落ちにくいのが特徴。ノイズキャンセリング性能やバッテリー持ちも申し分なく、オールラウンドに使える完全ワイヤレスイヤホン。

Bose QuietComfort Ultra Headphones

これまでのBoseのヘッドフォンの中では最高峰の音質を誇る(個人の感想)。Boseっていうと重低音なイメージかもしれませんが、これは実にバランスがよく、音の抜けもよくアタック感も強い。軽くて装着感もとてもよい。

そしてなにより、あらゆるヘッドフォン中最強レベルのノイズキャンセリング。Boseな見た目が苦手でなければ、おすすめ中のおすすめ。

個人的に残念なのは、操作が物理ボタンじゃなくてタッチ操作なこと。タッチ操作のイヤフォンやヘッドフォンは誤操作がどうしても増えるし、手探りで操作しにくいデメリットもある。物理ボタン操作だったらメインヘッドフォンとなっていたと思います。

Bower & Wilkins Px7S2e

フラッグシップのPX8ではなく、Px7S2e。Px7の最新版はPx7S3でこちらはのPx2S2eは型落ちとなりますが、充分過ぎるほどの音質とノイズキャンセリング性能なので、コスパ的にはこちらをおすすめしたい。ルックスも落ち着いていて付け心地も抜群な、大人の嗜み系ヘッドフォン。

また、USB-Cケーブルでロスレス優先接続も可能な、一粒で二度おいしいおまけつき。コスパ高いです。

型落ちにつき、中古も狙い目です。

Px8と比較した記事もご覧ください。

Apple AirPods Max USB-C版

iPhoneで、ワイヤレスで、そして「いい音で」音楽を楽しみたいなら、結局のところこれがベストだなってのが、今の僕の結論。

「8万円の音はしない」などというYouTubeレビューも散見されますが、これは音質だけの価格ではもちろんありません。トップクラスのノイズキャンセリング、外音取り込みに加え、Apple製品どうしの超親和性、唯一無二の空間オーディオ、ドルビーアトモス対応、そしてファッションアイテムとしても世界の著名人に愛されているキャラクター性。

こう書くと「音はそこそこなのか」と思われるかもしれませんが、正直音質もトップクラスで、他の5万円以上のヘッドフォンと比べても、まったく見劣りしないどころかむしろこっちの方がいいまであります。

極めつけに、ついに実装されたUSB-Cによる優先ロスレス接続。唯一の「アレ」だったLightningからUSB-Cになったことで、いよいよロスレスで音楽を楽しめるようになりました。(24bit/48kHzに変換されます)

高いには高いなりの理由があると言うもので、それに見合った、いやそれ以上のメリットを享受できると僕は思います。

iPhoneでいい音で音楽を聴くためのおすすめアナログ有線ヘッドフォン

さてお次は有線接続ですが、USB接続は上記3機種のワイヤレスヘッドフォンでもできるため、ここでは「アナログ接続」に限定します。

HIFIMAN SUNDARA

有線ヘッドフォンでは、個人的には「開放型」がおすすめ。ワイヤレスの方で紹介した「密閉型」との劇的な違いが楽しめます。

というわけで、個人的なおすすめはこちら。HIFIMANの開放型ヘッドフォンは、平面駆動型という、一般的な開放型とは一線を画すサウンド。HIFIMANシリーズ全般として、その超性能からすると信じられないような破格で手に入れることができます。なかでもこのSUNDARAは、非常に高いコスパとその金網ルックがカッコよくておすすめ。

開放型の持ち味である音場の広さと解像度の高さ、バイオリンなど弦楽器の高音域の伸びと鮮烈な響き。密閉型しか試したことのない方は、確実に新しい世界が開けることでしょう。

コレにハマったら、より上位のHIFIMANに手を出すもよし、です。ってか出したくなりますよきっと。

iPhoneに接続する場合は、Apple純正のUSBドングルDACだとやや頼りないので、出力の高いDACを選びましょう。

Final A5000


個人的に推したいのはFinalの有線イヤフォン。広い音場に加え、クリアな中高域と締まった低域。ヴォーカルも楽器も自然に浮かび上がって聴きやすい。なにより、20000円くらいしそうなイケメンケーブルがおまけ感覚でついてくる。

まとめ

知人に「iPhoneって音悪くね?」と言われて困惑していた皆さん。iPhoneは現代最高のハイエンドオーディオです。

結局、iPhone ×AirPods Pro 2 / AirPods Maxも、まごうことなきハイエンドであって、何ひとつ間違っていないということです。この記事をここまで読んでくれたあなたなら、その裏付けもしっかりと理解していただけたことと思います。なんの迷いもなく、自信をもってiPhoneで音楽を楽しみましょう。

とはいえ、音楽の聴き方に正解も間違いもないのは事実。自由に音楽を楽しむのが真のオーディオオタクであります。ただ、ある程度オーディオの知見をもっていれば、高額なオカ○トオーディオに手を出さずとも、iPhoneをAndroidに買い替えなくとも、コスパよくハイエンドオーディオを楽しむことができるのも事実。

そんなこんなで、この記事が少しでも皆さんのiPhoneオーディオ生活の参考になれば幸いです。それではよきiPhone音楽生活を!

参考