iPhone X 実機使用レビュー。気になってたポイントを徹底解説!

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発表から1ヶ月ちょい。待ちに待ったiPhone Xが一昨日発売、そして我が家にもやってきました。というわけで、本記事は、「実際に使ってみての使い勝手」ということに的を絞ってレビューを書いていきます。これまでiPhone 6sを使っていたので、それとの比較も交えながら書いていきたいと思います。どうぞよろしく。

外観

スペースグレイという名のほぼブラック。iPhone 6sのスペースグレイとは完全な別物。比べると白と黒にしか見えない。背面はガラスで、デュアルカメラとアップルロゴとiPhoneの文字のみで、かなりシンプル。

側面のメタル仕上げが美しい。

相変わらず、背面カメラの出っ張りがすごい。iPhone 6s同様、置いたまま操作するとカタカタする。iPhone Xでも改善されなかったとなると、出っ張りをなくすのはよほど難しいことなのだろうか。

ちなみに、背面は指紋めっちゃつきます。

持った感じは?

iPhone 6sに比べて、そこそこの重みを感じます。比べなくても分かるレベルで重い。厚みも、持ち慣れたiPhone 6sに比べてちょっと厚く、全体的に重厚感が増した感じです。ただ、本体を見て「デケー!」と感じることは全然ないです。たぶん、横幅が大きいと直感的にデカいと感じるのかも知れませんが、iPhone Xは幅はiPhone 6sと大差なく、視覚的なデカさはあまり感じません。

というわけで、持った感じは「重厚感がひとまわり増した」感じです。Plusを使ってる方は、さほど違いは感じないかもしれません。

画面の大きさは?

劇的に大きいと感じる。実際劇的に大きいわけですが。Viewport的な話をすると、横は375ptで変わらずなので、少し実サイズの広いiPhone Xの方が全体的に拡大表示される感じです。で、縦は667ptから812ptに増加しているので、つまり縦の表示エリアがかなーり広くなっています。

ディスプレイの下を揃えてiPhone 6sと比較。圧倒的に縦長。ニュース記事やブログなどの長い文章を読むときには視認性が高く、読みやすい印象を持ちます。

ちなみに、ベゼルレスというほどベゼルは狭くないです。というか横はiPhone 6sとあまり変わりません。これがさらに半分になったらだいぶ全画面感が違うと思われます。

とは言え、ものの2-3日使っただけで、もう6sの画面サイズには戻れなくなってしまいました。

Face IDどうなの?

一言で言うと、近未来。本当はFace IDだけではなくTrueDepthカメラについて話すべきかもしれませんが、ひとまず気になっている方も多いだろうFace IDについて。

充分に実用的なFace ID

iPhone Xを手に持った状態でロック解除するには、非常に快適です。iPhoneを傾けてスリープ解除する設定にしておけば、実質持っただけでロックが解除されます。つまり、何もしなくてよい。ホーム画面を開くには、下から上にスワイプですが、これはFace IDでロックが解除される前にあらかじめスワイプしておくことも可能。つまり、スワイプとロック解除の順番はどちらでもokなので、スリープ解除直後にスワイプしておけば、Face IDでロック解除後にすぐ画面を開くことができます。

机に置いたままの認証は難しい。今のところ。

と、なかなか好感触のFace IDですが、机に置いた状態でロック解除する場合は、正直ちょっと微妙。というかほぼできません。まず、顔がカメラから45°(かそれ以下)くらいの視野角に入らないと認識してくれないので、顔を動かすか、本体をこっちに向けないといけない。で、失敗すると例のごとくパスコードを求められる。

僕はMacの横にiPhone置いててそのままロック解除して使うことが多いので、その場合は指を載せるだけのTouch IDの方が便利です。ただ、手がウエッティーでも解除できるので、その面で相殺される感じかもしれません。

当面の対策としては、ハンドタオルみたいなものを下に置いてiPhoneが顔の方に向くようにするか、iPhoneスタンドみたいのに立てかけておくとよいでしょう。

ちなみに、距離はけっこう離れてても認識してくれるようで、手を目一杯伸ばしても大丈夫でした。また、夜間の車内でも問題なく認識されました。

Face IDの最も優れた点は「何もしなくてよい」

App Storeなどで買い物をする時は、電源ボタンを2回押しでFace IDが開始され、認証後に購入が完了します。Touch IDの方が簡単な気が…。とか思ったけど言わない。

で、上記の支払いなどが絡む場合以外。例えばSafariの自動入力の際にもFace IDを通すようになっていますが、この場合はユーザーは何もしなくても自動的にFace ID認証が行われ、即時入力されます。つまりFace IDの場合、このようにフルオートで認証するように実装することもできる、ということ。これは、タッチが必要なTouch IDではできない、Face IDの優れたポテンシャルの一つと言えます。

もうひとつ例を出すと、スリープ中に通知が来て一時的にスリープ解除された時にもFace IDは起動します。つまり、通知が来て画面がついて、それを見たらロックが解除されます。またiPhone Xには「ロック中は通知の内容を表示させず、ロック解除したら表示する」機能が追加されており、これはつまり「他人が見ても通知の内容は分からないが、自分が見たら分かる」ということ。なんとも近未来を感じます。また、通知を見た瞬間ロックは解除されているので、その通知を右にスワイプするだけで、(Touch IDのタッチ認証をすっ飛ばして)内容のページへアクセスすることができます。

事実上何もしなくても本人認証ができるFace IDには、とても大きな可能性を感じますし、今後さまざまな用途に普及していくものと思います。

各所でTouch ID vs Face IDみたいに言われているものたちは、ほとんどが「スリープ状態からロック解除してホーム画面を表示する手順」についてのみ語られているもので、Touch ID vs Face ID という話とはちょっと違うように思います。Touch ID, Face IDはロック解除の手段というだけではありません。もちろん、各所で言われているとおり、Face IDのロック解除 > ホーム画面表示の手順は改善の余地があると思います。例えば、スリープ時にも「下からスワイプ」を有効にして、それをスリープ解除とホーム表示を兼ねるジェスチャーとすれば、今のTouch IDと同じ工数でホームを表示することができると思います。

Face IDについて別記事を書きましたので、よかったらご覧ください。

変更になったジェスチャー達どうよ?

ホームへ戻る、コントロールセンター、通知センター

画面下から上へちょいスワイプでホームへ戻る動作は、かなり好感触。僕は物理ボタン押しより性に合ってます。しかし、このジェスチャーは従来のコントロールセンターを表示するジェスチャーとまるかぶりしているので、コントロールセンターは画面右上から下にスワイプに変更されています。ちょうどノッチの右側部分から下に引っ張ってくるとコントロールセンター。中央から左部分からだと従来どおり通知センターが出てきます。

ちなみに、ホームの3ページ目とかから1ページ目、ホーム中のホームに戻るにも同じで、下から上にちょいスワイプです。

Appスイッチャー

まず、アプリスイッチャーを開くには、下から上スワイプを画面中央あたりで止めると表示されます。

特筆すべきは新ジェスチャー「隣のアプリに移動する」の追加。アプリ起動中に下に表示されているバーを左右に動かすことで、隣のアプリに移動できます。これは、個人的には欲しかった機能なので、ちょっと嬉しい。

画面下のバーを左右にスワイプすると、隣のアプリに移動できる。2つのアプリを交互に使いたい時などに便利。

移動した先のアプリを操作すると、アプリがForeground(使用)状態になり、その時点でそのアプリが一番右に移動します。

で、アプリを強制終了するにはこれまでは上スワイプでしたが、これが廃止され、「アプリのサムネイル長押し > 削除ボタンタップ(または上にスワイプ)」に変わっています。つまり、一手間増えた形です。

僕はこの変更に結構共感しています。というのは、そもそも、きょうびのスペックのiPhoneではアプリを終了する必要はないよ、というAppleからのメッセージともとれます。スワイプだと誤って終了させる誤操作をしやすいので、削除ボタンへの変更は賛成です。

ちなみに、Appスイッチャー画面でアプリのサムネイルを下スワイプすると、そのままアプリ画面が拡大されてForegroundになります。

簡易アクセスどうなの?

従来は、ホームボタン2回タップで画面が半分下に降りてくる方法だった簡易アクセス。ホームボタンのないiPhone Xではどうなってるのかというと、「画面の下端を下にスワイプ」というジェスチャーになっています。聞いただけで難しそうなとおり、ちょいちょい失敗します。僕はあまり使うことはないかも。

余談ですが、この簡易アクセスって、なんかそこはかとないマッチポンプ感を抱く機能であります。

ディスプレイのクオリティどうよ?

圧倒的なクオリテイ。これだけでiPhone Xにしてよかったとさえ感じます。僕が一番期待していた部分でもあります。

iPhone初の有機ELディスプレイ、加えてTrue ToneとP3対応、さらには458ppiの超高精細。とiPhone 6sから劇的な進化を遂げています。

iPhone 6sだけを使っているとさほど気にならない、というか普通に綺麗ですが、比較すると一目瞭然。有機ELで、白がより白く、黒はより黒くなった印象。

黒に関しては、ベゼルの縁の黒との境目はほぼ見えないほど。iPhone 6sは境目が見えています。

赤などの色域もかなり広がっていて、おまけにTrue Toneの色温度調整により、より自然で、よりコントラストの高い画質になっている感じです。

True Toneは人によっては赤すぎる(色温度が低すぎる)と感じるようです。確かに白い紙と並べると若干赤みがかった(色温度の低めな)調整がされます。でも、僕には環境光にマッチしたとても自然な色温度に感じるので、iPad Pro 10.5以来、好きな機能のひとつであります。

余談ですが、一般に日本人は色温度の高い(青よりの)ディスプレイを好む歴史的背景があるようです。(初期のブラウン管がなんちゃら、みたいな)

有機ELディスプレイにありがちなギラつき感もなく、True Toneの設計思想からも、Appleのディスプレイチューニングに対するこだわりを感じます。

ノッチと角丸でコンテンツが隠れたりしないの?

これらの要素によってコンテンツが隠れてしまわないか、という懸念を、ぱっと聞きの素人としてはしていたわけですが、さまざまな対策がなされています。

まず、Webコンテンツを横(Horizontal)で表示した時は、自動的に左右に余白が追加されます。余白の色は bodyタグの色になるのかな?たぶん。

で、Appleのサイトのように余白を作らないためには、サイト側でそれ用の設定が必要っぽいです。またWeb屋さんの仕事がひとつ増えました。

お次はアプリ。iPhone Xには、他のiPhoneより余白の多いベースラインが上下に設けられていて、開発者はそれをもとにレイアウトを決めたり、またコンテンツが隠れないように自動的にコンテンツの位置を調整する設定をすることで、コンテンツが隠れないようになっています。

下の画像で、左ノッチと右ノッチでコンテンツの表示位置が違うのが分かると思います。

ちなみに、iPhone X非対応のアプリは16:9で表示され余白部分は黒くなるので、ノッチとは無関係。しかしこの非対応アプリの余白がかなり気になります。

カメラのポートレートモードどうなの?

背面デュアルカメラによりプロ並みのボケ具合を表現できると話題のポートレートモード。これも大いに期待していた部分であります。試しに一枚撮ってみました。

30cmほど後ろに置いたiPadや、その背景がしっかりボケています。が、やはりミラーレス一眼のボケとはずいぶん違う気がします。仕組みが違うので当たり前ですが。

撮影時には、計算をしてるのか、ボケとの境目がチラチラしたりして難しい。あと、ピントの合った被写体(Mac)の境界がボケてしまってます。撮り方の問題かもしれませんが、思っていた感じとはちょっと違ったかも。

お気に入りのミラーレス一眼がお蔵入りにならずに済みましたが。

ベンチマークどうなの?

Geekbench 4にて計測。

前評判どおりのすさまじいスコアを叩き出しました。

ちなみにiPhone 6s↓

手持ちのMacBook Pro 13↓ もはやMacより高性能なiPhone X。oTL=3。価格も大して変わりませんし。

急速充電どうなの?

ケーブルを持ってないので試してません。個人的にはAnkerがLightning – USB-Cをリリースするまで待ちます。今のところ、AnkerのPowerIQで充分です。無接点充電も今のところ使う予定はありません。

スリープさせようとするとスクショが…。

スクリーンショットを撮る方法が、電源ボタン + 音量上げるボタンに変更になってます。で置いたままiPhone Xをスリープにしようと思って片手の親指で電源ボタンを押そうとすると、ちょうど本体を支える側の中指が、対面にある音量上げボタンにかかるため、スリープしようとしてスクショが撮影される、といったことが、1日で4回くらいありました。

これを避けるためには、意図的に他の指での支え方を変えなければならず、なかなかのストレスを感じます。それか、スリープまでの時間を短くして放置にしようかな。うん、そうしよう。

ステータスバーにバッテリーのパーセントが表示されなくなったけどどうよ?

ステータスバーがノッチの両脇に設定されたためエリアが狭くなり、さまざまなアイコンなどが非表示となりました。ネットでも指摘されていたのが、バッテリーのパーセント表示ができないこと。

僕もこれまでは表示させていましたが、でもよくよく考えたら、別に要らなくね?という感じです。実用的には「充分だよ」「もうすぐなくなるよ」くらいが分かればいいんであって、数%単位で随時チェックする必要なんてないのです。もちろん、完全に見れないのではなく、コントロールセンターやバッテリーウィジェットで確認することはできます。

個人的には、常時数字が見えない方が、細かいことが気にならずストレスも軽減されるのでは、と思います。

追記。バッテリー持ちどうよ?

大事なことを書き忘れていたので追記です。みんな大好きバッテリー持ち。

実際のところ、これまで使っていたiPhone 6sとバッテリー持ちの比較はできません。なぜなら6sは2年使って劣化してるので。というわけで、X単体でどうよ?という話です。

ディスプレイの変更、その他スペックの向上によるバッテリー消費はみなさん気になるところだと思いますが、結論から言うと、すこぶる良好です。

きょうびのiPhone(iOS)には、省エネルギーのためのさまざまな先進的技術が搭載されています。

例えば、以下のようなもの。

  • 明るさの自動調節
  • iCloudフォトライブラリの同期や自動ダウンロードの一時停止
  • 必要な時だけ本気出す
  • 画面を見てる間は画面スリープしないので、スリープまでの時間を短く設定しても不便がない

また、そもそも搭載してるバッテリー容量が大きい。

iPhone 6s -> 1,715mAh
iPhone 8 -> 1,821mAh
iPhone 8 Plus -> 2,675mAh
iPhone X -> 2,716mAh

と、iPhone 8 Plusよりも大きいバッテリーを搭載しています。ちなみに、8 Plusは6 Plus, 7Plusより小さいバッテリー容量ですが、その分エネルギー効率がアップしており、実質変わらないと言えます。

この辺の、さくっとバッテリー減らしたりするあたりに、スペックと実用のバランスを上手くとっているAppleらしさを感じます。

上記に加えバッテリー無劣化状態の現在は、2年使った6sよりも長持ちしています。

その他

まずは、いろんな場面で触感(クリック感)が追加されています。例えばカメラ撮影時にクリック感があったり、アラームや日付の時にぐるぐる回すヤツを回転させるとカチカチなったりします。これはiPhone Xだけなのか8もなのかは分かりませんが、ユーザビリティの向上に一役買っているものと思います。

もうひとつ。Face IDばかり大きく取り上げましたが、実際にそれを可能にしているのは、例のノッチに凝縮されている「TrueDepth カメラ」であり、これは「ユーザーが今iPhoneを見てるか」といったことを判別し、画面の明るさや通知の音量を最適化したり、画面をオフってくれたりもします。単に認証方式が指紋から顔になっただけではなく、ユーザーの挙動からiPhoneのエネルギー効率化などを図ることも可能になっているわけです。今後このTrueDepthカメラがさまざまな場面で活躍していくことで、さらなる進化が期待されます。いよいよスマートフォンが意思を持ち始めた感がありますね。

全体を通しての感想

一日使ってみての感想。

Good

ブラックでシンプルな筐体デザインがカッコいい。背景のガラスも高級感を醸し出しています。筐体デザイン面では、全体的に僕はとても好きです。指紋付くけど。ひとつ言うなら、背面デュアルカメラの出っ張りだけでしょうか。

一番目を引いたのは、やはりディスプレイのクオリティ。単にスペックの話かというとそれだけではなく、True ToneやP3、有機ELのチューニングなどAppleのこだわりが垣間見えるものでもあります。

また、筐体サイズは多少大きくなったものの、劇的な画面サイズの拡大はやはり目を見張るものがあります。iPhoneではよく観るだろうニュースサイトやブログなどが快適に閲覧できます。

さらには、Face IDおよびTrueDepth カメラから感じるそこはかとない可能性。

Bad

ワースト1は背面デュアルカメラの出っ張り。次にFace IDの視野角の問題。続いてスリープしようとしてスクショ、の誤操作頻発。

いずれも、iPhoneを置いたまま操作しようとした時の問題であります。もしや向こうの方々って置いたままロック解除、みたいなながら仕事をしない風潮なんでしょうか?日本人の風潮ですか。そんな気になりました。

願望

さらに、これはずっと思ってることですが、iPhoneのカメラでは4:3かスクエアしか撮れません。iPhone Xの場合、4:3の写真だと、横画面の2/3程度にしかならず、1/3は余白となります。画面持て余しすぎ。フルサイズ、もしくはせめて16:9で撮影できるようにしてほしいところ。フルサイズの2.165:1の画像はかなり縦長(横長)で、面白い写真になるとおもうのですが。

総合的な感想

「挑戦」と「実用」のバランスをうまくとった、手のひらサイズの近未来であります。

iPhone Xの最大の特長は、ディスプレイの形状とFace IDと言えますが、Face IDは手に持って使う分には申し分ないクオリティ。ホームボタンを撤廃して実現した省ベゼルディスプレイは、ノッチ部分を含め完成形というわけではないのでしょうけど、かなり攻めた設計で、全く新しいコンテンツ体験を与えてくれるものであります。

ノッチの形状に関しては苦肉の策だったのでしょうが、逆に、その形状がiPhone Xのアイデンティティとも言えるものであり、みなさんがiPhone Xと聞いて真っ先に思い浮かべるのがこのノッチだと思います。今後、技術が更に進んだときにはこのノッチ部分もなくなってしまうことでしょう。逆に、それはそれでさみしい気がしないでもありません。

さて、iPhone X実機使用レビューは以上です。今後のiPhoneがどの方向に舵をとるのか、楽しみです。